2015年9月2日水曜日

人食いバクテリアが静かに襲来,致死率29%,激速で増殖し免疫細胞などなんのその

「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」

とにかく激速で増殖し免疫細胞などなんのその・・・ちょっと怖い。



致死率29% 「人食いバクテリア」3年間で207人死亡



人食いバクテリアとは? 患者数が過去最多の「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」 SOCIETY


“人食いバクテリア”とも呼ばれ、手足のえ死を引き起こし死に至ることもある「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の患者数が、過去最多になっていることがわかった。国立感染症研究所は、手足の腫れなど感染が疑われる症状が出た場合には、すみやかに医療機関を受診するよう呼びかけている。8月18日、FNNニュースなどが報じた。
国立感染症研究所のデータによると、感染者数は2014年が273人だったのに対し、2015年は8月9日までで既に279人にのぼり、調査を始めた1999年以降、最多となった。都道府県別に見ると、東京都が44人で最多。大阪府(28人)、神奈川県(20人)、千葉県と兵庫県(それぞれ15人)などが続いた。

「人食いバクテリア」はいかにして進化したか WIRED


2014年に発表された研究成果は、「人食いバクテリア症」と呼ばれる感染症を引き起こす「A群レンサ球菌」の進化の過程を説明するものだった。

バクテリアの進化は、実に急速だ。ライフサイクルが短く世代交代も目にも止まらぬ速さで行われるため、自然淘汰に適応し、人のつくりあげた洗練された抗生剤を軽くいなしてしまう巨大病原菌へと進化していく。
人類からすれば、肉食性の変種への対処が厄介なのはいうまでもない。『Proceedings of the National Academy of Sciences』誌で発表された研究(PDF)は、こうしたバクテリア、「A群レンサ球菌」の進化を詳細に分析したものだった。進化の過程を図示することで、科学者は、変種のあとに続く世代に対処し、病の本質を理解しようとしている。
あるいはあなたには、A群レンサ球菌がノドに感染した経験があるかもしれない。レンサ球菌のタイプによってはさまざまな経路で感染する可能性があるが、場合によっては致命的な症状になることもある。
「レンサ球菌は筋肉などに感染しますが、血流にも入り込みます。全身に波及することで、敗血症性ショックと呼ばれる症状に至ります」と、カリフォルニア大学サンフランシスコメディカルセンターの医師、ポール・サラムは述べている。皮膚や靱帯、血管などの軟組織が徹底的に破壊されてしまう壊死性筋膜炎と呼ばれる症状にかかることもあるという。
バクテリアも、ウイルスに感染する
しかし、そもそもレンサ球菌が悪性で攻撃性が強いものであった、とは限らない。1980年代初頭、突然伝染病として猛威をふるうようになったわけだが、上記の研究からは、そうなるに至ったプロセスを知ることができる。
科学者たちが明らかにしたのは、A群レンサ球菌におけるほんの些細な変化が、世界的な伝染病を引き起こすきっかけになったということだった。
「ヒトと同じように、バクテリアもウイルスに感染するのです」と、ヒューストンメソジスト研究所の伝染病の病理学者で、論文著者の1人でもあるジェームス・マッサーは言う。
80年代のあるとき、“最初のウイルス”がA群レンサ球菌のバクテリア細胞1個に感染し、その遺伝子を新たな毒素を生み出すバクテリアに変えてしまった(この現象は「遺伝子の水平伝播」として知られている)。そしてさらに、バクテリア遺伝子の突然変異が起き、毒性が“グレードアップ”した。
「こうしたプロセスが、2つの変化をもたらしました。感染数と重症度それぞれを高めたのです」(マッサー氏)
研究は、大掛かりなスケールで取り組まれたにも拘わらず低予算で行われた。5年前であれば、5つのゲノム分析を行うのでさえ“一大プロジェクト”だと考えられていたが、今回の研究が調査対象としたのは、3,615ものA群レンサ球菌ゲノムだ。技術の進歩によって、科学者は生物医学の研究において長らく疑問とされていた問題に取り組めるようになったわけだ。
そして、レンサ球菌と対峙することの意味は非常に大きい。「A群レンサ球菌にはワクチンもありません。しかし、得られた情報を活用すれば、バクテリアにとっての“アキレス腱”がわかるでしょう」と、マッサー氏は述べた。
「伝染病がどのようなものか、わたしたちは理解できるようになりました。ただ、いまのところは、その病の背景に共通した法則を見つけ出すために、同様の実験は他のA群レンサ球菌で繰り返していきます」
参考文献:
Nasser, W. et al. (2014) Evolutionary pathway to increased virulence and epidemic group A Streptococcus disease derived from 3,615 genome sequences. PNAS.


脅威「人食いバクテリア」 増殖して手足壊死、致死率30〜50% 毎日新聞

 
突然発症して急激に手足の壊死(えし)などが進み、時に人の命を奪う「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の患者報告数が近年、増加傾向にある。国立感染症研究所によると、昨年は1999年の調査開始以降最も多い273人に達した。今年も2月15日までで68人に上る。急激な進行と致死率の高さから「人食いバクテリア」と恐れられる細菌感染症の実態とは?【藤野基文】
 主な原因菌の「A群溶血性レンサ球菌」は特別な細菌ではない。へんとう炎やとびひ、皮膚炎などを起こすが、通常は抗菌薬で治療できる。症状がないまま、のどなどに保菌している子どももいる。
 しかし傷口などから細菌が体に入ると、まれに劇症化することがある。初期症状は手足の痛みや腫れ、発熱などだが、病気の進行は極めて速い。細菌が急激に増殖し、通常は細菌のいない筋肉や筋膜を壊死させたり、血流に乗って全身に回って多臓器不全などを引き起こしたりする。発症して数十時間以内にショック状態で死亡することもあり死亡率は30〜50%に達する。
 厄介なのは、抗菌薬の効果が菌の増殖スピードに追いつかない場合もあることだ。東京女子医大の菊池賢教授(感染症学)によると、「足が痛い」と訴えて来院した患者を診察した際、壊死して皮膚が紫色に変色した部分が見る間に広がっていった例もあった。菊池教授は「体内で免疫機構が全く機能せず、細菌が自由に増殖していくのを見ているようだった。どんどん壊死が広がる場合は切断して止めるしかない」と話す。
 なぜ劇症化するかは解明されていない。国立国際医療研究センターの秋山徹・病原微生物学研究室長によると、A群の中でも、ある特定の遺伝子を持った型が劇症化を起こす場合が圧倒的に多いことが分かっている。通常、体内に入った病原体は免疫細胞によって排除されるが、この型の菌は特別な物質を産生して免疫細胞を攻撃している可能性が考えられるという。
 感染研によると、この感染症は87年に米国で見つかり、日本では92年に初めて報告された。患者は全例、国に報告されることになっている。患者報告数は2000年代前半までは年50人前後で推移したが、その後は100人前後に増えた。さらに、10年代は200人前後と倍増。A群以外の溶血性レンサ球菌で劇症化する場合があることも分かってきた。